「総務やさん」第917号

●円安とインフレ-3

・・・・(株)総務システムサービス
代表取締役 伊藤 碩茂(ヒロシゲ)

 最近の日経によると、国内企業物価指数が10%、消費者物価指数が2.1%(前年比)上昇したそうです。資源高によるエネルギー関連費の上昇や、食料品の値上げの影響が大きいとのことです。弊社の社員たちからも聞く日々の買物での実感が偽らざるものであるということを、数字が物語っています。

 筆者も過去に似たような経験をしています。あれは、昭和49年のオイルショックの時でした。筆者が東京で学生生活を送っていた頃、下宿の共同トイレのドアに大家さんが貼り紙を貼りました。
「トイレットペーパーは各自で用意して下さい」
 この掲示を見て唖然としたことを、今でも覚えています。

 当時、現在のような学生用ワンルームマンションはありませんでした。私がお世話になっていたのは20人以上が利用する下宿でしたから、わざわざ自分用のトイレットペーパーを買って保管しておくなどという面倒なことはしません。トイレットペーパーをティッシュに代用するのが、学生にとっては普通のことでした。大家さんも、トイレットペーパーを失敬した犯人を捜すような野暮なことはしません。たとえ犯人の目星はついていても……。

 筆者が物心ついた頃、トイレットペーパー(チリ紙)は、長方形(B6サイズくらい)で、グレーの色をした再生紙でした。もちろん調達先は、近所の雑貨屋です。
 筆者の幼年時代は昭和30年代前半。当然、終戦後のモノ不足、貧困状態が普通でした。そのような状況下でしたので、再生紙のチリ紙でさえ入手できない、または節約志向の強い家庭では、新聞紙もしくは雑誌をチリ紙大にカットし、使用時は両手でほぐし柔らかくして使用していました。現代の若者にはにわかには信じがたいことが、戦後の日本では日常的に行われていたのです。

 消費者庁によると、まだ食べられるのに廃棄される食品、いわゆる「食品ロス」は、日本で年間570万トン発生しているそうです。これは、世界中で飢餓に苦しむ人々に向けた世界の食料援助量(2020年で年間約420万トン)の1.4倍に相当します。
 怖いのはインフレよりも、モノ不足です。しかし、終戦後15年間程度モノ不足に苦しんだ諸先輩方の苦労を思うと、今の世の中はまだ大したことではないのではないかと感じてしまいます。


● 給与(賃金)の話 第104回

・・・・細口 桂三(ほそぐちけいぞう)

 前回は、「ジョブ型雇用制度の発生経緯」を紹介しました。
 今回も近年のトレンドの「ジョブ型雇用制度」について考えてみたいと思います。

◎第2回「日本の雇用制度」の変遷

○明治から戦前
 明治から戦前の構造原理は、以下のようになっていました。

  • 学校名を重視。何を学んだかは重要ではない(高学歴主義)
  • 年齢や勤続年数を重視(年功序列)

 その結果、三層構造が確立されます。

  1. 大学卒の上級社員(職員)
  2. 高卒の下級社員(雇員)
  3. 中卒の現場労働者(職工、工員)

 そうです。おわかりの通り、完全な学歴身分主義の人事が行われた時代でした。また、明治維新から大正昭和初期にかけて教育レベルが上昇しました。それにともない、ストック採用した学歴主義よる優秀なエリート人材を「何でもやらせる」官庁の任官制度・軍隊の階級制度に当てはめていきました。これが「メンバーシップ型雇用」の起源だと思われます。

〇戦後からバブル期
 戦後から、雇用制度の変化が始まります。
 戦後の民主化と敗戦による生活苦などにより「身分制度廃止」「格差廃止」による「従業員の平等化」へ進みます。戦前の構造は次のように変化しました。

  • 職員、雇員→社員→正社員
  • 職工→工員→正社員

 つまり、全てを従業員とし、平準化したのです。こうして「国民総中流化」が実現しました。その後、企業は日本経済を成長させていきましたが、同時に企業規模による格差が拡大し、大企業と中小企業の二重構造が確立します。

〇現在の雇用制度
 バブル経済崩壊後は非正規雇用が増加し、雇用の構成は「全国大企業」「地方中小企業」に「その他」が加わり、新たな三層構造となりました。
 さらに、現在は約6割の「正規雇用」と約4割「非正規雇用」の二重構造化へと変化しています。この非正規雇用の多さから「ジョブ型雇用」が社会的に発生し、同一労働同一賃金の議論に繋がってきたのです。

 今回は「ジョブ型雇用」の2回目として、雇用制度の変遷を簡単に説明しました。次回は