「総務やさん」第1022号

●400年続く企業の矜持と言行一致

・・・・吉子 泰仁(よしこやすひと)

 「長崎で買ってきてほしいカステラは何?」と訊かれたらどう答えますか?

 ねとらぼが50代を対象に上記のアンケートを実施した結果、1位に輝いたのは福砂屋のカステラでした。かくいう私も50代で、カステラというとまず福砂屋のカステラをイメージします。つい1週間前にも親戚から福砂屋のカステラが送られてきて、至福の時を過ごしました。

 コンビニスイーツを筆頭に、今は安価なスイーツが溢れている時代。美味しいカステラを造るメーカーもたくさんあります。それらの中でさえも多くの人に「福砂屋のカステラが食べたい!」と思わせる力があるのはすごいことです。では、その魅力はいったいどこからきているのでしょうか。

 ヒントは福砂屋ホームページのトップにありました。
 「手わざ 時をつなぐ 心をつなぐ」
 福砂屋は、熟練の職人による手作りによる製法を大切にしているそうです。

 さて、そんな福砂屋は1624年創業、今年で400周年を迎えます。長年続いている企業ということは、常に新しい人材が入ってくるということです。福砂屋の就活関係サイトを見てみると以下のように書かれています。

 3つの企業理念
・存在意義
 手づくりの伝統を日々に確かめ、カステラ文化を創造します
・経営姿勢
 すべて誠実を旨とします
・行動規範
 社会とともに歩みます

 1つめの「存在意義」は続けて「福砂屋は、古来の手わざを継承育成すべく、創意工夫に努めます。カステラ本家として、カステラ文化の創造・普及・発展を使命とします。」と書かれています。企業理念の先頭に記載する事項はその企業の根本を表しています。この企業理念からはカステラを製造・販売するだけでなく、カステラ文化を守り育てていく矜持が垣間見えるようです。

 さらに、カステラ職人(製造職)の求人欄には以下のような記述があります。

 福砂屋のカステラは、1624年の創業以来、職人による手わざにこだわっています。「一人一貫主義」を掲げ、1人の職人が、1つのカステラに対して最後まで責任をもって仕上げていきます。季節や天候に合わせて細やかな調整し、入念に生地をつくる技が求められます。時代の逆をいくような手間のかけ方から、福砂屋ならではのふくよかな味わいが生まれるのです。
 創業以来伝承している古来の「手わざ」を、これからも受け継ぎ、未来に繋いでいくお仕事です。」

 お気づきになった人も多いと思います。単なる「カステラを製造する人」を求めるのではなく「手わざを受け継ぎ、継承する人」を募集する文章となっています。

 仕事をするうえで、人はそれぞれ目的や意味を持とうとします。”3人のレンガ職人”の寓話にも通じますが、福砂屋は単に「カステラを造る」という作業者を求めているのではありません。レンガ職人のお話でいえば「後世に残る歴史的事業に参加して町中の人を笑顔にするため」に仕事をしてくれる人に来てほしいのです。

 そんな福砂屋の矜持を感じる出来事が1つあります。
 新商品の米粉カステラ「八十八カステラ」が今年6月から販売開始となりました。米粉カステラは通常のカステラに比べて膨らみが弱く、高さを出すことが難しいそうです。しかし、福砂屋は5年以上の年月をかけて“職人の攪拌技術”によってその難題をクリアしたそうです。
 材料が変わっても手わざにこだわり、目的を達成したというのは、まさに福砂屋のカステラ職人(製造職)の求人欄に書かれていた「手わざを受け継ぎ、継承する人」を体現しているようです。口だけではなくその揺るがない姿勢が企業を支えていると言ってもよいでしょう。

 企業の存在意義との言行一致が続いていくのであれば、500年後も福砂屋のカステラが食べられるのではないかと思います。

【参考資料】
1.ねとらぼ
【50代に聞いた】「長崎で買ってきてほしいカステラ」ランキングTOP30! 第1位は「カステラ (カステラ本家 福砂屋)」【2024年最新調査結果】
https://nlab.itmedia.co.jp/research/articles/2818322/

2.福砂屋ホームページサイト
https://www.fukusaya.co.jp/

3.キャリスタ就活 株式会社福砂屋
https://job.career-tasu.jp/corp/00139706/