「総務やさん」第1090号

●昭和のマネジメントが通用しない時代

・・・・吉子 泰仁(よしこやすひと)

 昨年12月に『仕事に「生きがい」はいりません 30年の調査データが明かすZ世代のリアル』という書籍が出版されました。本書は、様々な時系列調査データをもとに、Z世代の価値観や行動心理を「上の世代とのギャップ」という視点から読み解く一冊です。

 世代間のギャップを「溝」として、具体的に職場、就活、成長、生きがい、努力、コミュニケーション、消費、承認欲求、恋愛、社会貢献、信用の領域の溝を11章にまとめ、Z世代がなぜ「仕事に生きがいを求めない」のか、その背景をデータで明らかにしています。

 堅い本かと思いきや

  • 忌避されるのは「仕事の結果に対し情熱を持つ上司」
  • 「がんばれば報われる」が死語になった世界
  • ”拒否回避欲求”が強い若者たちの必需品は「言い訳」
  • 気軽に感情を共有できる相手の1位は「対話型AI」

など、キャッチーな言葉で深層心理がわかりやすく解説されていました。もしご興味があればお読みいただければと思います。

 30年数年前に新卒として企業に就職した私ですが「仕事が生きがいか?」あるいは「仕事に生きがいを求めたことはあるか?」と質問されたら、もとより仕事に生きがいを感じたり、希求したことがないと答えるでしょう。
 書籍で内閣府の調査が紹介されていますが、働く目的として「生きがいを見つけるため」を選んだ割合は2001年で24.4%、2023年では12.8%と減っており、逆に最も選択されているのが「お金を得るため」で、49.5%が64.5%に増加しているそうです。

 そもそも「生きがい」とは、人生全体の目的や意味づけに関わる概念であり、自己の価値観や人生観、アイデンティティと深く結びついた動機です。仕事に限らず、家族や社会など幅広い領域にまたがっているもので、自身の存在意義とも言えます。同じように「甲斐」がつく言葉には、働きがい、努力のしがい、話しがいのあるといったのもあります。
 漢字の「甲斐」には「交換によって得られる利益」や「代償として得られる価値」という意味合いがあるそうです。つまり、「生き甲斐」は生きることで得られるもの、逆説的に言うと、自分の生を賭けても得たいと感じるようなものかもしれません。
 そして、仕事に関わるのは「働きがい」という言葉でしょう。働くことで何が得られるのか、その対価は自分にとって価値があるものなのか。自分基準になる要素であり、仕事に対する満足感、職場で関わる人々や環境との相互作用から生まれる幸福感につながるものです。
 さらに、働きがいと一部重なる部分もある「やりがい」。特定のタスクやプロジェクトに対して”やる価値がある”と感じられる心理的報酬、行動の動機づけとなるもので短期的な日々の充実感につながるものです。
 生きがい、働きがい、やりがいを簡単に整理するなら、「やりがい」は日々の仕事や活動の中で感じる達成感や充実感、幸福感、それが積み重なることで仕事全体の意義や働く理由に発展して「働きがい」になり、さらにそれが人生全体を意味づける「生きがい」になっていく人もいる(必ずなるわけではない)という印象です。

 もともと「仕事に人生を賭ける」という価値観は25年前でも全体の4分の1程度のものでした。おそらく戦後復興から高度経済成長し、「ジャパンアズナンバーワン」と仕事人間を量産した時代とは異なり、今は「仕事を人生の中心に置く必要はない」時代になったのだと思います。
 バブル崩壊後、1994年に発行されたのがリクルートの『モチベーション・リソース革命』でした。その中では「組織型、職場型、生活型、仕事型」と4つの働くモチベーションの源泉を挙げて、新しい働く価値を提案しようとしていました。
 そして2022年、『モチベーション・リソース革命』発行から約30年経って、リクルートの関連企業がSPI3 for Employeesという検査をリリースしました。これは、質問に答えることで「安定」「金銭」「貢献」「承認」など10個のモチベーションリソースのうち何を重要視しているか、つまり社員個人のやりがいは何かを把握するものです。

 こうみると、失われた30年の間、日本企業は従業員一人ひとりの多様で動的な「働きがい」と向き合ってきたのか、個別最適化へ組織や仕組みをアップデートできたのか、問われ続けている感じがします。

 ちなみに、先述の検査で一般社員3708名を分析した結果、出現率が比較的高かったのは安定(53%)、金銭(41%)とのことです。あなたの部下だったら、どうマネジメントしますか?

【参考資料】
・『仕事に「生きがい」はいりません 30年の調査データが明かすZ世代のリアル』
金間大介・酒井崇匡 SBクリエイティブ

・マネーポストWEB
【Z世代が考える「いい会社」の条件】社風がよく上司や先輩とも距離が近い会社はなぜ受けが悪いのか? メンタルを穏やかに保てる「安定した会社」がぶっちぎりの評価
https://www.moneypost.jp/1360213/3/

・Works Review 「働く」の論点2020
「自分の『生き生き働く』を マネジメントする時代」辰巳哲子
https://www.works-i.com/research/report/item/wr2020_2-1.pdf

・リクルートマネジメントソリューションズ
「一般社員の会社・職場・仕事に関する意識調査 第1回」
https://www.recruit-ms.co.jp/issue/column/0000001204/