「総務やさん」第1088号

●給与(賃金)の話 第113回

・・・・細口 桂三(ほそぐちけいぞう)

今回は、2026年以降の賃金の動向について考えたいと思います。

〇現状の日本の賃金
 まず2025年末の状況を見てみましょう。実質賃金がプラスに転じた月もあるものの、未だに賃金上昇が物価上昇に追いついていない状況です。実質賃金がマイナス0.8%となっています。

〇日本の賃金の動向
 今後の賃金について5つのテーマに分けて考えていきます。
 1.賃上げの継続性
 2.マイナス実質賃金からの脱却
 3.最低賃金の上昇
 4.初任給の上昇
 5.職務給への転換

1.賃上げの継続性
 政府が「賃上げ、賃上げ」と言い続けていることから、4.5%~5.5%の賃上げで暫くは推移すると考えられます。逆に言えば、企業としてはその程度以上の賃上げは難しいということでもあります。
 長期金利も上昇すると予想され、財政破綻の懸念もあります。先行きが見通しにくい状況では、企業の賃上げ判断は慎重となり、やはり内部留保優先で動く会社が多数になると思われます。
 後述しますが、本当の意味での年功序列からの脱却が始まり、賃金決定要素が徐々に変わろうとしています。しかし、本来の能力要素での賃金制度に移行するのは簡単ではなく、今しばらくは時間が掛かると見ています。当面は物価上昇率を鑑み、実施賃金を±ゼロに調整する賃上げになると思います。

2.マイナス実質賃金からの脱却
 賃上げの動向は物価上昇をにらんだ上昇率になるため、大幅なマイナスにはならないと見ています。しかし、大幅なプラスに転じることも考えにくいと思います。

3.最低賃金の上昇
 最低賃金は、インフレであるため、間違いなく1,500円を超えてくると思います。最低生計費も上昇しており、政治的にも最低賃金を上げない理由はないと思われます。

4.初任給の上昇
 人口の多かった世代が完全引退して本格的な少子高齢化社会となり、今後は構造的な人手不足に拍車がかかっていくでしょう。現在は若手社員獲得競争のため初任給は上昇しましたが、これからはある程度のところでが上昇が鈍化すると思います。初任給は社内における職務価値の初期値となるため、本来の能力基準によりその後の賃金改定(ここではベアを除く)が不定期に実行されることになると思われます。

5.職務給への転換
 なぜか物価上昇すると決まって出てくるのが能力評価です。賃上げ根拠が物価上昇率で決まる一方、評価は能力で行う傾向があります。本来はデフレ下で、適正な生産性や能力評価に基づく賃金決定がなされるべきですが、デフレ下では賃上げせずに、賃金は上がりませんでした。しばらく物価上昇が継続するの
で年功序列からの脱却と職務給への転換が進むと思われます。

 今回は「2026年以降の賃金の動向」を考えてみました。