「総務やさん」第1070号

●自動運転の未来

              ・・・・(株)総務システムサービス
                  代表取締役 伊藤 碩茂(ヒロシゲ)

 車の自動運転の未来は、技術、社会、法律の進化とともに大きな変化が期待されている分野です。自動運転が問題なく運用される未来はどのように構築されていくのでしょうか。以下に、主要なポイントをまとめてみました。

(1)自動運転のレベル(SAE分類)
 自動運転技術は「レベル0~5」で分類されています。
レベル0:自動運転なし(全て人間が操作する)
レベル1:運転支援(例:自動ブレーキ、アダプティブクルーズコントロール)
レベル2:部分自動運転(例:Teslaのオートパイロット)
レベル3:条件付き自動運転(一定条件下では車が運転)
レベル4:高度自動運転(特定エリア内では車が完全自動運転)
レベル5:完全自動運転(人間の関与が一切不要)

(2)各国の動き(2025年現在)
 既に自動運転の実用化に向けて世界中が動いています。
アメリカ:WaymoやTeslaがリードし、州単位での法整備が進行中
中国:BaiduやAutoXが自動運転タクシー(ロボタクシー)を展開中
日本:政府がレベル4実現を国家目標とし、地方での導入に注力中
ヨーロッパ:環境政策と連動してMaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)が加速中

(3)自動運転の未来予測
 
1.2025~2030年(レベル3~4の普及)
 一部の都市や高速道路でレベル3が実用化。
 商用車(配送車・バス)での自動運転導入が進む。
 法整備やインフラ整備が進行中。
(例:ホンダ、メルセデスなどがレベル3車を販売開始)

2.2030~2040年(レベル4の拡大)
 自動運転タクシー(ロボタクシー)が都市で実用化。
 自家用車よりもMaaSが主流に。
 交通事故の大幅減少が期待される。

3.2040年以降(レベル5の可能性)
 人の操作が一切不要な完全自動運転車の普及。
 車の所有概念が変化:シェアリング経済の加速。
 都市の構造も変化(駐車場の減少、道路空間の再利用など)。

(4)さまざまな課題
 自動運転の技術が進むのは非常に喜ばしいことですが、昔から議論されている難しい問題がいまだたくさん残っています。例えば技術面においては、以下のようなものがあります。

  • センサー・AIの精度向上(悪天候・夜間対応など)
  • サイバーセキュリティ対策
  • 倫理的な判断(緊急時の行動選択)

 しかし、技術的な問題が解決したとしても、以下のような社会・法律的な問題はなかなか議論が進まないことが考えられます。

  • 誰が事故の責任を取るか(ドライバーか、メーカーか)
  • プライバシー保護とデータ管理
  • 雇用問題(タクシー運転手、トラック運転手など)

 課題はまだまだ山積みですが、自動運転によるメリットは非常に大きいと予想されます。少子高齢化となり、地方で過疎化が急速に進んでいる日本でも、早く自動運転が実現されるよう筆者も期待しています。


●逆境を乗り越える力の源

                 ・・・・吉子 泰仁(よしこやすひと) 

 この夏、県岐商が熱かったですね。地元では「県岐商」、全国では「県岐阜商」と呼ばれ、公立高校でありながらその粘り強さと「アチチアーチ!」の大合唱で大きなニュースとなりました。

 その中でも特に、背番号9番の外野手横山温大選手に注目が集まりました。生まれた時から左手の指がないという逆境にもかかわらず、ひたむきな努力を続けてきたといいます。
 そのうえ、高校1年の秋に「自分はピッチャーよりバッティングの方がハンデは大きいと思いますが、バッティングに自信があります。なので、外野手として挑戦したいです」と前監督に申し出たそうです。
 鍛治舎前監督は彼がAチームに昇格した2年生春のことをこう語っています。「その間の彼の努力は、まさしく筆舌に尽くせない内容。バットを昼夜振り続け、スイングスピードはAチームの基準140キロに迫る値となっていました」

 そんな彼の姿は、京都嵯峨二尊院に伝わる「人生五訓」を思い起こさせます。あせるな、おこるな、いばるな、くさるな、おこたるな、です。

 できない自分にイライラせず、腹を立てず、高慢にもならず、ふてくされることなく、できることは何かを考え努力し継続する。なかなか実践できないことです。
 この五訓、仏教法話では古くから話されていたようですが、日本海軍士官標語でも「怒るな、威張るな、焦るな、腐るな、負けるな」で『おいあくま』と呼ばれています。
 最後が”迷うな”となっている五訓もみかけますが、『おいあくま』は大手企業経営者が社員への訓示として引用したり、「世界の盗塁王」福本豊氏が座右の銘にしていたりしているので、どこかで聞いたことがある方もいるのではないでしょうか。

 この『おいあくま』を社訓として掲げている企業が愛知県にあります。今年で創業110周年を迎えた株式会社マキタです。
 現社長の曾祖父にあたる後藤十次郎氏は『おいあくま』を自身の人生訓としていました。マキタのホームページには以下のように記載されています。
「経営者は、従業員に対して納得のいくように諭し、言い聞かせればよい(いばるな)。従業員もお互いに怒ってばかりいたのでは、仕事はうまく運ばない(おこるな)。不況になったり、仕事の上でつまづくといった逆境にあっても、あせったり(あせるな)、くさったりしてはいけない(くさるな)。あせって過当競争をすれば、自分で自分の首を絞めるようなものである。だからといって、のんびりしてよいということではない。負けたのではそれこそ何にもならない(まけるな)。」
 同社は、米国からの報復関税やダンピング課税があった環境下でも前述の『おいあくま』精神で発展してきました。
 十次郎氏は1915年牧田電機製作所に入社後一度を会社を離れたものの、朝鮮戦争後の不況の波を受けて倒産の危機に陥る同社に懇望されて取締役として復帰。
 1955年に社長に就任後、全従業員に「現在の設備を活用して大量に作れるものを見つけよう」と呼びかけ、主要顧客の声にもとづいて独自製品の開発を推進。
 そして試行錯誤の末、”国産初電気鉋”を米国製価格8万越えの時代に、2万9800円という価格で発売。マキタを再建に導きました。
 同氏が社長を引き受けたのは「自分を育ててくれた会社を再建させてみせるという男の意地」だったそうです。

 組織において周囲の人に影響を与え動かす力をリーダーシップとすれば、横山選手はまさにその力を存分に発揮していると言えるでしょう。チームメイト、さらには監督のインタビューからも「チームの士気を高める存在として、仲間からも一目置かれるリーダー的な役割を果たす」存在となっていることがうかがえます。
 周りの人が自然に感化されていくのは、彼の「言動」であり、日々発する言葉や目に見える行動の源だと思います。

 「今までの感謝の気持ちも込めて全国の舞台で全力でやりたいと思っているので、“恩返し”できるといいかなと思っている」という甲子園での抱負を語る言葉にある「恩」。

 二尊院には「人生五訓」とともに”此の世の中で一番”で始まる7つの大事な教え「心の糧七か條」があります。これの最後が「此の世の中で一番素晴らしいことは常に感謝の念を忘れず報恩の道を歩むことである」です。仏教経典には「知恩報恩の者、人中の珍宝となす」ともあるようです。
 人生五訓、報恩感謝の大切さを教えてくれた横山選手に”感謝”し、報恩できるように日々精進せねばと思います。

【参考資料】
1.高校野球ドットコム「左指がない球児の活躍に県岐阜商前監督が称賛!
大ブレイクの始まりは前監督に届いた『外野手転向直訴』のメール」
https://news.yahoo.co.jp/articles/31c5565b5f3ee46a2560428c86c168038fbdc9fe

2.神戸学院経済学論集 林隆一
「資本財企業による先進国の需要開拓―電動工具企業のマキタの事例研究―」 
https://kobegakuin-economics.jp/wp-content/uploads/2021/09/201712_49_227.pdf

3.株式会社マキタホームページ 人財育成 人財への考え方
https://www.makita.co.jp/sustainability/social/02_2/