「総務やさん」第1072号

●突風被害から学ぶべきこと

・・・・野田 貴仁(のだたかひと)

  9月5日、静岡県牧之原市で発生した突風が、多くの方々の暮らしを一瞬にして変えてしまいました。気象庁はこの現象を「竜巻」と認定しました。今回の災害は、わずか数分間の自然現象がもたらす破壊力の凄まじさを、改めて私たちに突きつける出来事となりました。全半壊を含む住宅被害は1,000棟を超え、人的被害も複数報告されています。

 被害に遭われた皆様に、心よりお見舞い申し上げます。

 台風が温帯低気圧へと変わる過程で急激に発達した積乱雲が、極めて限定的な地域に深刻な爪痕を残したのです。一般的に台風による被害でイメージするのは、暴風雨であったり、集中豪雨であったりすると思うのですが、今回のような現象も起こりうるということを見せつけられました。

 気象庁のホームページを参照すると、突風には竜巻、ダウンバースト、ガストフロントの3種類があるそうです。これらはいずれも、発達した積乱雲から生じる突風です。説明分を以下に引用します。

・竜巻
 積乱雲に伴う強い上昇気流により発生する激しい渦巻きで、多くの場合、漏斗状または柱状の雲を伴います。被害域は、幅数十~数百メートルで、長さ数キロメートルの範囲に集中しますが、数十キロメートルに達したこともあります。

・ダウンバースト
 積乱雲から吹き降ろす下降気流が地表に衝突して水平に吹き出す激しい空気の流れです。吹き出しの広がりは数百メートルから十キロメートル程度で、被害地域は円形あるいは楕円形など面的に広がる特徴があります。

・ガストフロント
 積乱雲の下で形成された冷たい(重い)空気の塊が、その重みにより温かい(軽い)空気の側に流れ出すことによって発生します。水平の広がりは竜巻やダウンバーストより大きく、数十キロメートル以上に達することもあります。

 栃木県でも9月3日に突風被害が発生しましたが、こちらはダウンバーストかガストフロントである可能性が高い、と報道されています。

 こうした局地的災害に対し、従来の広域的な災害予測だけでは限界があることが明らかになってきました。特に「雨台風」や弱い低気圧と見なされる状況下でも、突発的な竜巻やダウンバーストが生じうるという気象特性を念頭に、防災に対する想定範囲をアップデートする必要があります。

 防災を考える際、備蓄や避難訓練も大切なのですが、これからは「情報への感度」と「判断の即時性」も重要になってきます。竜巻注意情報や気象レーダーの情報は、適切に読み解けば、避難するための数分から十数分の猶予をもたらす可能性があります。その「短いが貴重な時間」をどう生み出すか、どう活かすか、そんな視点も加えて考えていく必要がありそうです。

 災害が発生した後の対応についても準備が必要です。牧之原市では、避難所での生活支援や罹災証明の発行など、自治体の迅速な対応が注目されました。

 私たちは、自然災害に対して無力であるかのように感じがちです。ですが、情報に敏感になり、行動の選択肢を持つことが、命を守る第一歩です。突風という予測困難な災害に対しても、備えと知識があれば、被害を最小限に抑えることができます。今回の出来事を通して得た気づきを、これからの備えに少しずつ活かしていけたらと思います。

参考:気象庁「竜巻などの激しい突風とは」
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/toppuu/tornado1-1.html