総務やさん

「総務やさん」第843号

トランプさん 新型コロナ陽性
             ・・・・(株)総務システムサービス
                  代表取締役 伊藤 碩茂(ヒロシゲ)

 2日の金曜日、トランプ大統領夫妻が新型コロナ陽性発覚のニュースが飛び
込んできました。大統領選まであと1か月を切り、情勢は混沌としています。
感染防止対策として有効とされているマスクを避けていたトランプ大統領のこ
の一報を聞いて”自業自得”と感じた人も多いのではないでしょうか。

 大学時代、筆者は政治学を専攻しました。アメリカの政治史を齧ったとき、
「反知性主義」という言葉に違和感を覚えた記憶があります。

 「反知性主義」という言葉は、一見「知識や学問」を否定する主張に見えま
す。しかし、実際は「上流階級の知識人やエリート層」に反発する思想と見ら
れています。
 この思想・言葉が登場したのは、1950年代のアメリカです。次に紹介する2
つの出来事は、特にこの頃のアメリカを象徴するものといえるでしょう。
 1つ目は、いわゆるマッカーシズムの発生です。共和党議員マッカーシーに
よって、共産党員・共産党員同調者に対して過激な攻撃が行われました。攻撃
された共産党員同調者の中には、マスコミ関係者や知識人層も多く含まれてい
ました。
 2つ目は、1952年のアメリカ合衆国大統領選挙です。元軍人のアイゼンハワ
ーが、政治経験が全く無いことをあえて強調して、知識人層に人気のあったス
ティーブンソンを圧倒的な票差で下したのです。アイゼンハワーの支持者は、
元弁護士でエリートのスティーブンソンの演説を上から目線に感じ、反発心を
持ったと言われています。このように、「反知性主義」は第二次世界大戦後の
アメリカで静かに息づいてきました。
 トランプさんは、リベラルや知的エリートを嫌うこの反知性主義を受け継い
でいるように思われます。エリートを嫌う大衆を味方にして、大統領選に当選
しました。

 始皇帝の”焚書坑儒”以来、独裁者は、常に知的エリートを嫌います。権力
欲にまみれた独裁者達は、知的水準の低さと虚言癖により、最終的に敗北する
傾向が見られます。
 菅さんの日本学術会議候補者6人の任命を拒否した事件にも、反知性主義に
陥る危険性を感じ、今後を懸念しています。


台本という考え方
                ・・・・西川 裕介(にしかわゆうすけ)

 次のような状況を頭に思い浮かべてみてください。

 見知らぬ土地、理解できない言葉、そんな中で空腹に襲われました。手持ち
の食糧はすでに食べつくし、なにもありません。周りを見渡してみると、地元
のレストランと思われる建物が1軒のみ、その他に店は見当たりません。その
レストランに入ろうか入るまいか迷った末、空腹に勝るものなく、意を決して
店のドアを開けました。

 緊張と不安と空腹の中で店に入ったものの、さてどうしようか。店内の様子
をうかがうと、店員が案内する様子が見られないため、空いている席を見つけ
て着席しました。メニューを開きましたが、言葉がわからないため残念ながら
読めません。周りを見ると、隣席の人が食べている物が美味しそうだったので
それと同じものと身振り手振りで伝え、なんとか注文することができました。
しかし、無事お腹を満たした後の会計の最中、何故か店員は不機嫌そうにこち
らを睨んでおり、なんだか後味悪い経験となりました。


 上記のような、言葉もなにもわからないシチュエーションにおいても、食事
にありつけたのは何故でしょうか?
 手掛かりになるのは、「スクリプト(台本)理論」(Schank & Abelson(19
77))と呼ばれる認知言語学の理論です。これは“人は、過去に経験した一連
の流れ(順序)を構造化して保存している”という考えを基本にしています。
つまり、人は様々なシチュエーションにおいて、その人に保存されている台本
に従って行動するというものです。

 冒頭のような見知らぬ状況でも、自分自身の台本を呼び起こしながら、周辺
の状況(案内をしない店員・隣席の客の料理等)を手掛かりにして台本内の選
択肢を選び、進めていくことにより、レストランで食事をするという目標が達
成できたと考える事ができます。
 しかしながら、訪れた土地にチップの文化があることは主人公の台本になか
ったため、チップを払わなかったことで店員の顰蹙を買い、後味の悪い食事と
なってしまったのです。

 外食する時の行動だけでも様々な選択肢が存在します。ファストフード店で
あれば注文カウンターに行く必要がありますし、人気のある店であれば事前予
約が必要なこともあります。

 幸いなことに、台本の素材は文献のみならず、インターネット等で多種多様
のものを入手することが可能な時代となりました。(情報の正確性を吟味する
必要はありますが……。)

 自身の行動を台本にして考えてみると興味深い発見があるかもしれません。